第12回岩手公衆衛生学会総会特別講演

農村から見た虚血性心疾患への視点

林 雅人

平鹿総合病院院長


虚血性心疾患発症年齢と患者数

 わが国の虚血性心疾患頻度は日常診療の印象や臨床統計から増加しているとする臨床医に対して、年齢調整死亡率からみて1970年以後減少を続けているとする疫学医の意見にずれがみられる。その主因が治療法の進歩によることはいうまでもない。しかしその内容をもう少し詳しくみると増加してきた虚血性心疾患は全体でみてもそうだが農村部では高齢者の頻度が著しく多い。一方食生活を中心とした生活習慣の都市化傾向は虚血性心疾患の危険因子を考える時、均一な集団として扱いやすくなってきたのかのごとくみえる。しかし厚生省から出されている人口動態で、虚血性心疾患の年齢調整死亡率を11大都市、市部、郡部の比較をすると図に示したように大都市に多く郡部に少ない。市部はその中間と従来からいわれていたとおりの結果が出る。一方これを人口10万比の粗死亡率でみると郡部、11大都市、市部の順となる。そこで人口10万比の死亡率を5歳ごとの年齢階層別にみると、どの年齢でも11大都市、市部、郡部の順となる。従来虚血性心疾患は都市部に多く農村部では少ないといわれてきた。しかし前述のように厚生省の人口動態統計によると人口10万比でみた虚血性心疾患の死亡数は男女とも11大都市より郡部のほうが多い。農村部で虚血性心疾患死亡が多い理由は高齢者が多いためということになる。

( 抄録の最初の章のみ掲載しました )
(岩手公衛誌,12(2),11-13,2001.)


閉じる