大気汚染と慢性閉塞性肺疾患との関連に関する疫学的研究(第二報)

米国胸部疾患学会質問票による八戸市民の呼吸器症状有症率について

中屋重直 * / 戸張 貢 * / 板井一好 * / 小野田敏行 * / 小栗重統 *
吉山武壽 * / 藤野 裕 * / 山田雅男 * / 工藤勝久 * / 須原 誠 *
佐藤 徹 * / 野原 勝 * / 立身政信 * /角田文男 *

* 岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座


おわりに

 八戸市の大気汚染が着実に改善に向かって10年を経過した現在、二酸化硫黄の大気濃度も全市にわたって環境基準に適合するようになり、僅かに浮遊粒子状物質の大気濃度のみが、時折一時的な高濃度汚染をみる程度である。こうした大気環境にある八戸市民の呼吸器症状について、全市にわたるATS-DLD調査票による疫学調査を実施したところ、昭和54年までの調査結果にみられたような持続性咳痰の高い有症率は認められず、40〜59才の工業地域住民においても男が3.5%、女が2.1%と、商業系区域と同一レベルの有症率へと低下していることが明らかとなった。このレベルは八戸市の大気汚染度からみて妥当なレベルといえる。
 留意すべき点として、60才以上の男の持続性咳痰の有症率が総じて高いこと、また小学生と60才以上の男の喘息有症率が環境庁報告書における各地の有症率に比して高率であること(しかし、重症なものは少ない)などである。これらの有症率と当地方の工業に起因する大気汚染との関連は、地域(区域)間の較差から検討したが明らかではなかった。

(岩手公衛誌,9(1),51-64,1998.)


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