地域保健実習からみた地区把握における地区踏査の意義

The significance of windshield survey at community assessment :
From a point of view on practice teaching of community health

時舘 千鶴子 *1 / 下屋敷 昌子 *2 / 立身 政信 *3

*1 岩手看護短期大学 *2 葛巻町 *3 岩手大学


キーワード:地区把握、地区踏査、地域保健活動、保健師教育

要約

 地域保健活動を展開するにあたり、保健師は、その地域の健康課題を探るための状況把握を行って活動計画を立てる。そのために行う地域住民の生活を含めた様々な情報の収集は「地区診断」や「地区把握」などと呼ばれる非常に重要な活動である。
 保健師養成機関ではその実習を行っているが、実習自治体の既存の資料をもとに、学内演習により地区の健康課題を把握して現地実習に臨み、保健医療福祉に関する施設や事業の見学、講話、座談会、健康教育、訪問看護などを行うことが多い。
 しかし、こうした実習内容では地域全体を見る視点に欠け、学生たちが「既存資料から浮かび上がった健康課題は住民の生活実態の結果である」と実感することは困難であると思われる。そこで、岩手看護短期大学専攻科地域看護学専攻の平成12年度学生に対して、既存資料によって把握した地区の概況を裏づける情報を収集するために実際に地区を見て歩く「地区踏査」を実習プログラムに取入れ地域の生活環境をどれだけ把握しているかについて、実習後の反省会の発表内容や、レポートで、平成10年度、11年度の学生と比較検討した。
 その結果、これまでの実習に比較し、地区踏査を加えた実習においては、住民との対話や地区の観察から地域の生活状況を把握し感じたことが具体的にあげられており、「地域の生活環境が健康と密接なかかわりをもつ」ことをより深く学び得たことがわかった。
 臨地実習にあたり地区踏査は、地域の情報を捉えるうえで有効な方法であり、また保健師が地域で活動する場合にも有効な方法と考えられる。

(岩手公衛誌,14(1),23-31,2002.)


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