喫煙習慣と糖尿病等全身疾患が口腔内に
及ぼす影響に関する追跡調査研究

第1報 喫煙習慣と歯周疾患の関連について

A cohort analysis of oral health with regard to smoking habits and general disease such as diabetes mellitus
I : The relationship betwen smoking habits and periodontal disease

佐々木 秀之*1/ 兼田 雪江*1/ 下村 薫*1 / 久保 朋子 *1
上山 明美*1/ 畠山 とし子*1 / 橋本 勢津*2

*1 田野畑村健康福祉センター / *2 岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学


要約

 岩手県田野畑村では、1989年度から健康福祉センターにより積極的に歯科保健活動を推進してきた。本研究では、生涯を通じた歯科保健活動の中で成人の歯科保健活動の一環として実施されたもので、口腔がん検診と喫煙習慣や全身疾患並びに口腔保健行動のアンケート調査により、禁煙対策と8020運動を通じた地域住民の健康づくりを目的としたものである。今回は研究の初年度として、喫煙習慣とCPI codeによる歯周疾患の関連性について分析し、問題点を検討した。研究対象者は今年度の口腔がん検診男性受診者125人の内、無歯顎者や喫煙経験者を除いて、非喫煙者34人、喫煙者37人の計71人を選別した。CPI code 3の重症所見者割合は、60〜79歳群で非喫煙者40.0%に比較して喫煙者61.5%と有意に多く、一人平均喪失歯数も非喫煙者9.50本に対して喫煙者13.62本と多く認められた。また、口腔保健行動アンケート調査でも、60〜79歳群の喫煙者にCPI code 3,4の重症所見者と朝食後に歯磨きをしない者の割合が、非喫煙者よりも有意に多く認められた。さらに、40〜59歳群のCPI code3,4の重症所見者では昼食後に歯磨きをしない者と補助清掃用具を使用しない者の割合が、CPI code1,2の軽症所見者よりも有意に多く認められた。
  これらのことより、中年成人群以降では喫煙習慣と歯周疾患の重症度には関連性が認められたものの、若年成人群では対象者数が少ないため有意差が明確でなく、今後、若年成人群の対象者数の増加や、口腔内に発現する全身疾患との関連等、継続して研究していきたいと考えている。

キーワード:喫煙習慣、口腔保健行動、歯周疾患

(岩手公衛誌,15(1・2),36-43,2003.)


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