中学生の精神保健推進のための養護教諭の対応と役割

The practice and role of school nurse in mental health promotion for junior high school students

堀篭ちづ子 *1 / 多田 淳子 *2 / 吉田講子 *3 / 遠藤巴子 *4

*1 西根町立西根中学校 / *2 滝沢村立滝沢南中学校 / *3 水沢市立南中学校 / *4 元岩手県立大学看護学部


キーワード:養護教諭、アセスメント、教育機能

1.要約

 養護教諭が日常保健室において応急処置と並行して行っている児童生徒への相談活動がどのように行われているかを明らかにすることを目的とした。応急処置を求めて来室した生徒との対応で「何かありそうだ」と養護教諭が判断した根拠・理由,中学生のニーズおよび生徒の学級生活に対する満足度について把握し,養護教諭のより望ましい対応のあり方と養護教諭が学校精神保健の中で果たしている役割について検討した。対象は,公立A中学校の生徒243人および応急処置を求めて来室した総利用者174人述べ581例の中から養護教諭が「何かありそうだ」と判断し記録してあった100事例である。保健室利用状況調査から保健室利用を主訴別に分類した。保健室来室記録からは,利用回数,養護教諭の判断,処置,対応について整理した。養護教諭が「何かありそうだ」と判断した内訳の整理には,来室したときの言葉や特徴,気になる表情,服装,行動,様子など表出している記述を抽出し分類した。生徒のニーズと養護教諭の教育的援助内容は,石隈(1999)の心理教育的援助サービスの項目に筆者が「身体健康面とその他」を加えて分類した。生徒の学級生活に対する認知の測定には河村(1997)の学校生活満足度尺度(中学生用)を使用した。その結果,学級生活満足群と不満足群では,欠席日数,保健室利用回数・来室時の主訴に違いが見られた。対応事例では,養護教諭は来室した生徒のサインを見逃さないように心がけ相談活動に発展させていた。応急処置の背後にある心身の悩みに教育的視点から関わっており,健康面のみならず心理社会面への関わりをしていた。養護教諭が中学生の精神保健推進において,学級での生活を視野に入れながら保健室でのアセスメントの仕方の工夫,教育的視点からの援助をも考慮に入れ適切に行っていくことが重要であると示唆された。

(岩手公衛誌,16(1),72-81,2004.)


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