1.はじめに
わが国は平成14年現在、65歳以上の老年人口割合が18.5%と、世界でもっとも高い国となった。今後の保健対策には、予防医学的な対応をさらに進めることが重要である。このような背景のもとに21世紀の国民健康づくり運動、健康日本21が提唱された。健康日本21では、根拠にもとづく健康政策として、地域の現状、目標値の根拠、目標達成の方策、期待できる効果をそれぞれ明らかにすることが重要であるとしている。健康課題の設定には、地域の現在の健康水準を明確にしたうえで、隣接地域との健康格差を明確にすることが重要とされているが、地域間の比較検討が行い得るような標準化された保健資料は少ない。
平成14年度より岩手県北部で調査を開始した岩手県北地域コホート研究は、市町村の行う基本健康診査の機会を利用し、標準化された方法で生活習慣や食習慣を含む調査を実施し、その後地域で行う発症登録情報を用いて集団を追跡することにより、脳卒中や虚血性心疾患の様々な危険要因を明らかにすることを目的とする。大規模な集団を対象とし、単一の検査機関が標準化された方法で血圧、血液検査を行った調査であるため、地域集団の差異を検討するための資料としても優れていると考えられる。
本報では、平成15年7月までに初回調査を終了した2保健医療圏5市町村について、会場で同意を取得した11,499人のBMI、血圧、血清脂質、血糖値、HbA1c値、喫煙および飲酒状況について報告する。
(岩手公衛誌,16(1),82-89,2004.)