学生による学生のうつ病予防の試みとその効果の検討

A trial of prevention of depression to students by students and evaluation of the trial.

志賀光二郎*1 / 黒澤美枝*2 / 石井千加*1 / 鈴木晴奈*3 / 木曽洋平*1
小野陽子*1 / 八重樫由美*4 / 丹野高三*4 / 大澤正樹*4 / 小野田敏行*4
板井一好*4 / 坂田清美*4/ 酒井明夫*5 / 高橋 敬*6

*1 岩手医科大学医学部 *2 岩手県精神保健福祉センター
*3 岩手医科大学歯学部 *4 岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座
*5 岩手医科大学医学部神経精神科学講座 *6 岩手医科大学共通教育センター数学科


要約

 日本の自殺者数は1988年以降急増している。また近年大学生の自殺者数も増加している。さらに4年制大学生の自殺率よりも医学部・歯学部・獣医学部といった6年制大学生の自殺率が高いという特徴がある。その自殺の大きな要因と考えられているのがうつ病である。このため我々は学生がうつ病や自殺予防についての確かな知識を身に付け、また学生自らの意識の変容・向上が必要であると考え、学生による学生へのこころの健康教育としてミニレクチャーを実施した。対象は2005年度の岩手医科大学新入生157名とし、方法は講義時間20分、質疑応答5分のミニレクチャーとした。その内容は「社会問題である自殺者数・率の増加とその背景、うつ病と自殺の関係、学生の自殺者数・率の増加とその背景、うつ病の原因と治療、相談機関の紹介」とした。また参加者のうつ病や自殺予防に関する知識と意識の向上を評価するために講義前後にアンケート調査を行い、講義前後のアンケート結果を比較検討した。講義前後で「うつ病は自殺につながりやすい」、「気分が落ち込んだら精神科へ行ってみようと思う」、「うつ病の人を励ましてはいけない」などの項目で知識・意識の肯定的変容や改善が認められた。このことから今回の学生が学生に対して行ったミニレクチャーはうつ病や自殺予防に関する知識や意識の向上に効果的であったと考えられる。

キーワード:うつ病、自殺予防、学生による学生へのミニレクチャー

(岩手公衛誌,19(2),39-43,2008.)


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